初めての方へ(不妊症の基礎知識)

不妊症の原因

不妊症の治療は原因究明から始まる

不妊症の治療を開始する前には、不妊原因は何かを精査する必要があります。とくに、不妊症専門病院では、現段階で可能な限りの検査技術を駆使して原因究明に努めます。その意味で、原因究明への強い熱意と不妊治療のレベルは相関しています。しかし、不妊症の約20%ははっきりとした原因がわからない原因不明不妊であり、高度生殖医療の対象となります。

キーワードその1 「妊娠成立のプロセスを復習しよう!」

■妊娠成立のプロセスがわかると不妊の原因を理解できます。
自然妊娠のプロセスを簡潔に言うと、性行為で精子が腟内に射精されたあと、精子は腟腔→子宮頸管→子宮腔→卵管へと旅をして、卵管で卵子と受精し、受精卵となります。受精卵は発育しながら子宮へと運ばれ、子宮内膜に着床した段階で妊娠が成立します。

このような妊娠成立のプロセスのどこかに問題があると不妊の原因に…。

★卵子:卵巣から成熟した卵子が排卵できない→排卵因子
★精子:元気な精子が十分に作られない→造精機能障害
★精子の通過性:腟内に射精された精子が卵管へたどり着けない
 →造精機能障害頸管因子・抗精子抗体・卵管因子
★卵子の通過性:卵管采が卵子をピックアップして卵管内へ取り込むことができない、卵管采が卵子を取り込んだあと、受精場所の卵管膨大部へ運ばれない
 →卵管采のピップアップ障害・卵管因子
★受精:精子と卵子が出会っても受精できない
 →排卵因子(卵子の受精能)・造精機能障害(精子の受精能)
★着床:子宮に到着した受精卵が子宮内膜に着床できない
 →子宮因子受精卵の着床能力が不十分(透明帯が硬い)

キーワードその2 「女性側の不妊原因は多種多様」

■女性の不妊原因は男性よりもずっと複雑です。
妊娠成立のプロセスからも理解できるように、男性不妊の主な原因は、造精機能障害(正常精子を作る力が不十分なこと)です。しかし、男性不妊の場合は人工授精や体外受精、顕微授精などの治療法があります。

一方、女性不妊の原因は排卵因子、頸管因子、子宮因子、卵管因子など、さまざま考えられます。さらに、たとえば排卵因子ひとつを考えても、卵子を成熟させるホルモンの働きに問題があるケース、卵巣に血液の塊ができる子宮内膜症のために排卵がうまくいかないケースなど、いろいろな原因が考えられます。女性の不妊原因は多種多様で、それだけ検査の種類も多くなるわけです
「不妊症の検査:女性の検査」参照

なお、女性側の不妊原因のなかで一番多いのは卵管因子で、何らかの原因で卵管が狭くなる、閉鎖する、卵管の運動性が低くなるなど、卵管の通過障害が起こるケースです。

キーワードその3 「子宮内膜症が不妊症の原因の場合も」

■体外受精も治療法の選択肢のひとつに入ります。
子宮内膜は本来なら子宮の内側にだけあるのですが、それ以外のさまざまなところに発生してしまうのが、子宮内膜症です。卵巣や卵管、子宮と直腸の間、子宮筋層などに発生し、卵巣内にできた場合をチョコレート嚢胞、子宮筋層に発生した場合を子宮腺筋症といいます。

子宮内膜はホルモンの影響で、月経のたびに出血します。さまざまなところに飛び火した子宮内膜も月経のたびに出血を繰り返し、月経痛や性交痛が起こってきます。また、不妊症の原因となる場合があります。

子宮内膜症は30代に多いのですが、なかには20代、10代で発症することもあります。特徴的な症状は月経痛が強いこと!なので、月経痛がひどいときは早めに検査を受けるといいでしょう。治療法は発生部位や症状の程度などによりますが、腹腔鏡(ラパロスコープ)の他、体外受精も選択肢のひとつとなります。

キーワードその4 「クラミジア感染症は卵管性不妊の重大な原因」

■女性側にダメージの高いクラミジア感染症
女性の不妊原因の中で最も多い卵管因子(卵管の通過障害)の場合、大半はSTD(性感染症)の原因菌が卵管やその周辺に感染するのが原因といわれています。とくに、最近増えているのがクラミジア感染症です。

クラミジア感染症の場合、男性では排尿痛などの症状が出て気づくことがありますが、女性ではほぼ無症状です。感染を知らないまま治療をしないでいると、子宮頸管→子宮腔→卵管へとクラミジア感染が広がり、卵管閉塞の原因になることがあります。

クラミジア感染症による卵管閉塞の場合、体外受精が第一選択肢となります。クラミジア感染症は男性よりも女性のほうに、より多くのダメージを与えるわけです。

キーワードその5 「男性不妊の原因のほとんどは造精機能障害」

■造精機能とは、正常精子を作る力のことです。
精子が作られるためには、男性ホルモンをはじめとするさまざまなホルモン群が関与しています。また、精子が徐々に成熟し、受精する力のある完成精子になるには、前立腺や精嚢から分泌される栄養成分も重要な役割を果たしています。しかし、男性側に造精機能障害があっても、ある程度の数の精子があれば人工授精で妊娠が可能です。さらには、1個の完成精子がいれば、顕微授精という方法で妊娠することも可能です。このため、不妊治療では、造精機能障害の原因を深く追求するよりも、人工授精や体外受精、顕微授精など、妊娠に結びつく治療が優先されます。

キーワードその6 「解明されつつある原因不明不妊」

■原因不明とは現時点での検査で原因が特定できないことです。
血液検査でホルモンの分泌量を調べる、超音波検査で卵巣や子宮の中を観察するなど、不妊の原因をさぐる検査方法にはいろいろあります。しかし、これらの検査ではっきりした原因がわからない場合を、原因不明不妊、または機能性不妊といいます。ただし、原因不明不妊は原因がないということではありません。現時点でできる検査では原因が突き止められないという意味です。

しかし、最近まで原因不明とされてきたなかには、卵管采が卵子をピックアップできないピックアップ障害や、受精卵の透明帯が硬く、子宮内膜に着床しにくいケースがあるとわかってきました。卵管采のピックアップ障害は、体外受精で妊娠が可能です。透明帯が原因の着床不全では体外受精・顕微授精による受精卵を子宮内に戻す前に、あらかじめ透明帯を薄く削るアシステッド・ハッチング(孵化補助)が有効です。

このように、原因不明不妊の「原因」が解明されるにしたがい、適切な治療法を選択して赤ちゃんを授かるご夫婦も増えています。

ページの上部へ戻る

トップページへ戻る